こんにちは
スズキキャリィトラックの
エンジン回転不調の修理事例を紹介します。
年式H17年 型式LE-DA63T K6Aエンジン 走行距離21,000km
最初は、
ヒートゲージが通常より高いという症状で入庫した
スズキキャリィトラック、
その際には、
ラジエターが詰まり気味という事で洗浄し、同時に冷却ラインも洗浄、
クーラント液を注入し、
エアー抜きを行い作業終了と思ったのですが、
エンジンが暖気しても
1400回転くらいから下がらない
そのうち、
エンジンコンピューターが
フューエルセーフしているのか、
ハンチング(高くなったり低くなったりの繰り返し)の症状が
通常は、冷間時は
1,500回転と高く設定されていて、温まってくると
900回転まで下がる設定。
何度エアー抜きしても変わらず、
サーモスタットが開きっぱなしの状態になってるのかな?
と思い
サーモスタットを確認してみることに、
助手席シートを取り外した画像です。
エンジンの上部分はこちらから点検・整備します。
黄色い円内の位置に、
サーモスタットが付いています
取り外した
サーモスタットです。
中のバルブのゴムが切れていました。
赤く汚れているので、冷却液のメンテナンスがかなり悪かったように思います。
とりあえず新品に交換して、エンジンをかけてみたのですが、
(本来なら最初から交換するべきですね)
やはり症状変わらず
ついでに、
水温センサーが故障している可能性も考えて、外して点検したところ異常無し
という事は、
スロットルに汚れが付着して誤作動しているのか?
と思い
スロットルボディーを外して洗浄してみることに、
運転席のシートを外して見る、エンジンの画像です。
スロットルボディーは黄色い円内の箇所にあります。
エアクリーナー類を外した接近画像
こちらは
スロットルボディーを外した後のエンジン側の画像
空気を取り入れる
インテークマニホールドの吸入口です。
外した
スロットルボディーです。
黄色い枠内は空気量を制御している
スロットルバルブです。
スロットルボディに、よく
スラッジが付着して動きが悪くなるケースがあるのですが、
それほど汚れは無く・・・ 一応清掃して取り付けます。
※ スロットルバルブの部品は繊細な構造なので、キャブクリーナーを吹きかけて綺麗に磨けばいい、という訳では無く、正式な
清掃方法が指定されています。
→
スロットルボディーの清掃時の注意点
取り付けてエンジンをかけてみると、またもや症状変わらず・・・
今度は
外部診断器を接続して状態を調べてみると異常コードは検出されず、
エンジンの状態を調べてみると、
冷間時のデータです。
温度は外気温と近い
27℃
回転数はエンジンかかっていないので0です。
冷間時の、別の項目のデータです。
目標回転数が1700回転近くと高いです。
暖気後のデータです。
目標エンジン回転数は
900回転になっていますね。
水温は
85℃まで上がっているのですが、エンジン回転数が下がらない状態です。
同じキャリィではありませんが、知り合いの同じ
K6Aエンジンの
MRワゴンを借りてきて、比較してみると
暖気後の
MRワゴンのデータです。
目標回転数まで下がっています。
〖MRワゴン〗
別項目のデータです。先ほどの
キャリィのデータと比べてみます↓↓
〖キャリィ〗
同じエンジンとはいっても車種が違うのでデータ数値を一概に比較は出来ませんが、
キャリィの方は燃料噴射時間が長くなっています。
あとは、
ISC(アイドルスピードコントロール)バルブの開度が、
キャリィより、正常な
MRワゴンの方が開いているのが興味深い数値です。
エアーの吸い込みが考えられるので、
インテークマニホールド側にパーツクリーナーを吹きかけて点検しても、(こうすると燃料を吸った状態になり回転数が上がる)
回転数は上がらないので、やはりこうしてみると
スロットルボディー側の故障の原因がかなり確率が高くなってきます。
スロットルボディーの
スロットルバルブの交換になりますが、
新品は
3万円を超える高額になることと、
このエンジンは
、
スロットルバルブが故障すると、エンジンコンピューターまで故障する
という事例を聞いていたので、もし、その
コンピューターまで壊れているとなるとさらに高額になるので、
※ 故障事例をくわしく説明している →
今月の実践!整備事例
まずは同じ型の中古部品を取り付けてテストしようと思ったのですが、
キャリィトラックのこの年式の部品はほとんど無く、
とりあえず
MRワゴンの
ISCVが同じようなので、それだけ取り付けてみることに、
スロットルボディーから外した
スロットルバルブですが、
ISCVは→の部品
内側はこうなっています。
こちらが
ISCVです。
センサー類のデータをもとにコンピューターから通電しての方向に動き空気の流量を調整します。
ちなみにこちらは、
ISCVを外した後の
スロットルバルブ側の画像
これで直るかな?と思っていたのですが、またもや症状は変わらず、
ちょっと暗礁に乗り上げてきた感じです。
とりあえず一連の作業で、
コンピューターが
ISCVを
コントロールしていることは確認できたので、
コンピューターは正常だと推定し、
スロットルバルブの
バイメタル側の不良しかないのでは?
という診断結果に至って来ました。
そこで、ついに新品を注文することを決断
新品の
スロットルバルブです。
黄色い円内が
バイメタルになります。
取り外した
バイメタルです。
こちらは、外した後の
スロットルバルブ側の画像です。
この2本のパイプから冷却液を取り込み、冷却液の温度が冷たい時は開いてエアーの流量を多くし、
温度が上がってくると閉じていって
エアーの流量を少なくする役割をしているようです。
サーモスタットと似たような仕組みのようです。
つまりは、
バイメタルの方が
メインスローの役割をしているしているようです。
※
バイメタルの呼び名を調べるためにネットで見つけた
にしやんさんの
ブログです。
→
K6Aスロットルボディをバラす♪
写真・推測した説明と、かなりくわしく書かれています。
(この記事を修理前に見つけていたらもっと早く終われたのに、残念)
交換してみると~
ついに
治りました
その時の外部診断器のデータです。
目標エンジン回転数に対して、
バッチリ下がっています。良かった、良かった。
結果的には、冷却液のメンテナンスの悪さが
バイメタルに影響していて、
今回の
オーバーヒート気味で、壊れてしまったのではないかと思われます。
今回は、結果的には、すぐに新品の
スロットルバルブを交換していれば、こんなに時間がかかることも無く、
早く終われて納車をすることが出来たと思いますが、
その時は、
バイメタルが本当の原因だと気がつかないままだっと思います。
本当の原因を調べることによって、その
構造や
仕組みがわかったことは本当に良かったと思います。
PS 教えていただいた、電子制御のプロフェッショナル、
トーメデンソーの
當銘さんどうもありがとうございました。
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